ここに二柱ふたはしらの神議かみはかりたいまいて「今吾いまあが生うめる子良こよからず。
なお天あまつ神かみの御所みもとに白まおすべし」即すなわち共ともに參上まいのぼりて、天あまつ神かみの命みことを請こいたまいき。
ここに天あまつ神かみの命みこともちて、布斗麻邇ふとまににト相うらえて詔のりたまいつらく
「女おみなの言先ことさきだちしに因よりて良よからず、また還かえり降くだりて改あらため言いえ」とのりたまいき。

この嶋しまは、身一みひとつにして面四おもよつ有あり、面毎おもごとに名有なあり、かれ、伊豫國いよのくにを愛比賣えひめと言いい、
讚岐國さぬきのくにを飯依比古いいよりひこと言いい、粟國あわのくにを大宜都比賣おおげつひめと言いい、土左國とさのくにを建依別たけよりわけと言いう。

次に隱伎之三子嶋おきのみつごのしまを生うみたまいき、またの名なを天之忍許呂別あめのおしころわけ。

次に筑紫嶋つくしのしまを生うみたまいき、この嶋しまも、身一みひとつにして面四おもよつ有あり、面毎おもごとに名有なあり。
かれ、筑紫國つくしのくにを白日別しらひわけと言いい、豐國とよのくにを豐日別とよひわけと言いい、
肥國ひのくにを建日向日豐久士比泥別たけひむかひとよくじひねわけと言いい、
熊曾國くまそのくにを建日別たけひわけと言う。

次に嶋伊伎いきのしまを生うみたまいき。またの名なを天比登都柱あまひとつばしらと言いう。
次に津嶋つしまを生うみたまいき。またの名なを天之狹手依比賣あめのさでよりひめと言いう。
次に佐度嶋さどのしまを生うみたまいき。
次に大倭豐秋津嶋おおやまととよあきつしまを生うみたまいき、またの名なを天御虛空豐秋津根別あまつみそらとよあきつねわけと言いう。
かれ、この八嶋やしまを先さきに生うみませるに因よりて、大八嶋國おおやしまのくにと言いう。

〔吉備兒嶋きびのこしまより天兩屋嶋あめのふたやまで并あわせて六嶋むしま〕

天あまつ神かみは布斗麻邇ふとまにで占うと、
「女性から先に声をかけたのが良くなかった。もう一回戻り、やりなおしなさい」と仰せになられました。

 
二柱ふたはしらの神かみは淤能碁呂嶋おのごろじまに戻り、再び天之御柱あめのみはしらを廻まわりました。
今度は伊邪那岐命いざなきのみことが先に「あなにやし、愛おとめを」、
続けて伊邪那美命いざなみのみことが「あなにやし、愛おとこを」仰せになりました。

言い終えた後、再び交わると、次々に子が生まれました。
はじめに淡道之穂之狹別島あわじのほのさわけのしま（淡路島）。次に生伊予之二名島いよのふたなのしま（四国）をお生みになりました。

この島は、身は一つですが顔が四つ有り、顔ごとに名前が有り、
伊予国いよのくにを愛比売えひめ（愛媛県）と言い、讃岐国さぬきのくにを（香川県）を飯依比古いいよりひこと言い、
粟の国あわのくに（阿波国、徳島県）を大宜都比売おおげつひめと言い、土左国とさのくに（土佐国、高知県）を建依別たけよりわけと言います。

次に隠伎之三子嶋おきのみつごのしま（島根県の隠岐諸島）をお生みになりました。
またの名を天之忍許呂別あめのおしころわけと言います。

次に筑紫島つくしのしま（九州）をお生みになりました。
この島も、身は一つですが、顔が四つ有り、顔ごとに名前が有ります。
筑紫国つくしのくにを白日別しらひわけと言い、豊国とよのくに（大分県と福岡県の一部）を豊日別とよひわけと言い、
肥国ひのくに（熊本県、佐賀県、長崎県）を建日向日豊久士比泥別たけひむかひとよくじひねわけと言い、
熊曾国くまそのくに（南九州）を建日別たけひわけと言います。

次に伊伎島いきのしま（長崎県の壱岐島）を生みました。またの名を天比登都柱あまひとつばしらと言います。
次に津島つしま（長崎県の対馬）をお生みになりました。またの名を天之狹手依比売あめのさでよりひめと言います。

次に佐度島さどのしま（新潟県の佐渡島）を生みました。
次に大倭豊秋津島おおやまととよあきつしま（畿内（または本州））をお生みになりました。
またの名を天御虛空豊秋津根別あまつみそらとよあきつねわけと言います。

この八島やしまを先に生んだため、この国（日本）を大八島国おおやしまのくにと言います。

〔吉備児島きびのこしまより天両屋あめのふたやまで并せて六島〕