天地のはじまり | 古事記はじめ

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【天地あめつちのはじまり】

天地あめつちの初発はじめの時とき、高天原たかあまはらに成なりませる神かみの名みなは、天之御中主神あめのみなかぬしのかみ。次に高御產巣日神たかみむすひのかみ、次に神產巣日神かむむすひのかみ。この三柱みはしらの神かみはみな、独ひとり神成がみなり坐まして、身みみを隠かくしたまいき。

次に国稚くにわかく浮脂うきあぶらの如ごとくして、久羅下くらげなす漂ただよえる時ときに、
葦牙あしかびの如萌ごともえ騰あがるものに因よりて成なりませる神かみの名みなは、宇摩志阿斯訶備比古遲神うましあしかびひこぢのかみ、次に天之常立神あめのとこたちのかみ。

この二柱ふたはしらの神かみもみな、独ひとり神成がみなり坐まして、身みみを隠かくしたまいき。

上かみの件くだり五柱いつはしらの神かみは、別天神ことあまつかみ。

次に成なりませる神かみの名みなは、国之常立神くにのとこたちのかみ、次に豊雲野神とよくもぬのかみ。
この二柱ふたはしらの神かみもまた、独ひとり神成がみなり坐まして、身みみを隠かくしたまいき。

次に成なりませる神かみの名みなは、宇比地邇神うひぢにのかみ。次に妹須比智邇神いもすひぢにのかみ。
次に角杙神つのぐいのかみ。次に妹活杙神いもいくぐいのかみ〔二柱〕。
次に意富斗能地神おおとのぢのかみ。次に妹大斗乃弁神いもおおとのべのかみ。
次に於母陀流神おもだるのかみ。次に妹阿夜上訶志古泥神いもあやかしこねのかみ。
次に伊邪那岐神いざなきのかみ、次に妹伊邪那美神いもいざなみのかみ。

上の件かみのくだり、国之常立神くにのとこたちのかみより以下伊邪那美神しもいざなみのかみ以前までを并あわせて神世七代かみよななよと称もうす。

〔上の二柱ふたはしらの独ひとり神がみは、各々一代おのもおのもひとよと云もうす。次に双ならびます十神とはしらは、各々二神おのもおのもふたはしらを合あわわせて一代ひとよと云もうす〕

現代のことばで読む

【天地あめつちのはじまり】

天地あめつちが初めて現れ動き始めた時、高天原たかあまはらに成った神かみの名みなは、天之御中主神あめのみなかぬしのかみでした。
次に高御産巣日神たかみむすひのかみ、次に神産巣日神かむむすひのかみが成りました。この三柱みはしらの神は、みな独ひとり神がみで、姿は見えません。

※神様は柱と数えます
※「成る」とは完成する、「誕生」するなどのことを意味します

大地はまだやわらかく、水に浮く脂のように、海月くらげのように漂っている時、
葦牙あしかびのように伸びあがるものから成なった神かみの名みなは、宇摩志阿斯訶備比古遅神うましあしかびひこぢのかみ、
次に天之常立神あめのとこたちのかみ。この二柱ふたはしらの神もみな、独ひとり神がみで姿は見えません。

以上の五柱いつはしらの神は別天神ことあまつかみと申します。

※葦牙（あしかび）とは葦の若芽のことです。
・ヨシまたはアシ（葦、芦、蘆、葭）
・別天神

次に成なった神かみの名みなは、
国之常立神くにのとこたちのかみ、次に豊雲野神とよくもぬのかみ。

この二柱ふたはしらの神もまた、独ひとり神がみで、姿は見えません。

次に成なった神かみの名みなは、
宇比地邇神うひぢにのかみ。次に妹須比智邇神いもすひぢにのかみ。
次に角杙神つのぐいのかみ。次に妹活杙神いもいくぐいのかみ〔二柱〕。
次に意富斗能地神おおとのぢのかみ。次に妹大斗乃弁神いもおおとのべのかみ。
次に於母陀流神おもだるのかみ。次に妹阿夜訶志古泥神いもあやかしこねのかみ。
次に伊邪那岐神いざなきのかみ、次に妹伊邪那美神いもいざなみのかみ。

以上の国之常立神くにのとこたちのかみから伊邪那美神いざなみのかみまでをあわせて神世七代かみよななよと申します。

〔国之常立神くにのとこたちのかみと豊雲野神とよくもぬのかみの二柱ふたはしらの独ひとり神がみは、各々一代おのおのひとよと申し、
次の十神とはしらは、各々二神おのおのふたはしらをあわせて一代ひとよと申します〕

・神世七代

この章に登場する神様一覧

▼別天神▼
天之御中主神あめのみなかぬしのかみ
高御産巣日神たかみむすひのかみ
神産巣日神かむむすひのかみ

宇摩志阿斯訶備比古遅神うましあしかびひこぢのかみ
天之常立神あめのとこたちのかみ

▼神世七代▼
国之常立神くにのとこたちのかみ
豊雲野神とよくもぬのかみ
男神	妹(女神)
宇比地邇神うひぢにのかみ	須比智邇神すひぢにのかみ
角杙神つのぐいのかみ	活杙神いくぐいのかみ
意富斗能地神おおとのぢのかみ	大斗乃弁神おおとのべのかみ
於母陀流神おもだるのかみ	阿夜上訶志古泥神あやかしこねのかみ
伊邪那岐神いざなきのかみ	伊邪那美神いざなみのかみ